水野 博司 医師 の経歴
1990年 | 防衛医科大学校 | 卒業 |
1990年 | 防衛医科大学校病院 | 研修医 |
1992年 | 海上自衛隊硫黄島航空基地衛生隊 | 赴任 |
1993年 | 防衛医科大学校病院 形成外科 | 専門研修医 |
1995年 | 自衛隊横須賀病院形成外科 | 入職 |
1998年 | 自衛隊江田島病院形成外科 | 入職 |
1999年 | カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA 形成外科 | 客員研究員 |
2001年 | 自衛隊舞鶴病院形成外科 | 入職 |
2002年 | 日本医科大学形成外科 | 講師 |
2006年 | 日本医科大学形成外科 | 准教授 |
2010年 | 順天堂大学医学部附属順天堂医院形成外科 | 主任教授 |
2010年 | 日本医科大学形成外科 | 客員教授 |
2016年 | カリフォルニア大学サンディエゴ校形成外科 | 客員教授 |

ここからはまぶたのクリニックの編集部である私が、実際に二重整形の論文について解説していきます。
ミャンマー初の二重整形臨床研究とは?
発展途上国のミャンマーでは、美容整形が急速に広がり始めています。
本研究では約3年間にわたり300人あまりの実症例をもとに、二重整形の結果とミャンマー特有の課題を分析しました。
対象症例は以下の通りです。
- 対象:304人(男性37人、女性267人)
- 年齢範囲:17~82歳
- 手術方式:切開法による重瞼術(全例)
- 実施期間:2016年12月~2019年11月
結論、ミャンマーでの二重整形は機能面の改善・美容面の満足度ともに良好な結果が得られました。
アジア人特有のまぶたと術式の特徴
アジア人は内眼角贅皮(蒙古ひだ)や上まぶたの脂肪量が多く、一重まぶたの人が多いです。
二重まぶたは眼瞼挙筋腱膜が真皮に付着して形成されます。
二重整形の切開法では、眼窩脂肪の切除や皮膚のたるみの処理も可能です。
ミャンマーでの二重整形の希望としては、若年層は自然な重瞼線とまつ毛の反りを好む傾向があり、中高年は皮膚の除去を伴う若返り目的が多いです。
二重整形の手術前後の機能比較(MRD1・まつ毛角度)
本研究では二重整形の機能的効果を定量的に評価するため、手術前と手術後で以下の2つの数値を比較しました(母数:60名)。
- MRD1(Marginal Reflex Distance):瞳孔中央から上まぶた縁までの距離
- まつ毛角度
結果は、MRD1が術前は 3.34 ± 0.66 mm に対し、術後は 4.40 ± 0.77 mm であり、目の開きが2mmほど大きくなりました。
まつ毛の角度の変化は、術前が約80°に対して、術後は約100°と見た目が改善されています。
測定項目 | 術前 | 術後 |
---|---|---|
MRD1平均値 | 3.34mm | 4.40mm |
まつ毛角度 | 約80° | 約100° |
二重整形の術後6ヶ月間の満足度の推移と評価スコア
二重整形の美容的効果を測定するために、二重整形を行った患者に対して、1ヶ月~6ヶ月後に電話による満足度調査を行いました。
満足度は、0=不満、1=許容、2=まあ満足、3=非常に満足、の4段階です。
結果を見ると、時間経過とともに最高評価の「非常に満足」が増加しています。
月数 | 非常に満足 (%) | 不満 (%) |
---|---|---|
1ヶ月後 | 49% | ー |
2ヶ月後 | 65% | ー |
3ヶ月後 | 72% | ー |
6ヶ月後 | 85% | 0.66%(2名) |
二重整形に関して民族ごとのまぶたのデザイン嗜好と審美感
ミャンマーは多民族国家ですが、民族ごとにまぶたのデザインに好みがあるのか調査してみました。
結果、Bamar民族は、幅広で大きい二重を好む(87%)傾向があり、Shan・Kachin民族は、狭く自然な二重を好む(83〜84%)傾向があることが分かりました。
民族ごとの顔立ちや文化・宗教観が二重の好みに影響していると思われます。
民族 | 狭い幅好み (%) | 広い幅好み (%) |
---|---|---|
Kachin | 84% | 16% |
Shan | 83% | 17% |
Bamar | 13% | 87% |
その他(Kayahなど) | 36% | 64% |
ミャンマーならではの二重整形手術後のケアの課題
地方では通院が困難であるためか、抜糸や経過観察のために再来院することができないケースがありました。
宗教・伝統薬・生活習慣が術後の回復状況に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、現地の伝統的な薬や食品によって、血糖値や血圧が上昇しやすいタイプの方などです。
ミャンマーでは抗生剤の乱用による耐性菌問題もあるため、抗生剤が効かない患者には別の種類の抗生剤を処方するなどの対策が必要です。
二重整形手術の安全性と合併症の報告
今回の研究対象において、重篤な合併症は報告されていませんが、創部感染や治癒遅延など、軽度の術後トラブルがありました。
合併症・トラブル内容 | 発生件数 | 対応 | 備考 |
---|---|---|---|
創部感染 | 1人 | 抗生剤投与・経過観察 | 発症は術後1ヶ月 |
創部治癒の遅延 | 2人 | 創部管理の指導・経過観察 | 特別な処置は不要 |
二重の非対称(左右差) | 6人 | 再手術実施 | 術後2ヶ月までに判明 |
二重の消失 | 1人 | 再手術実施 | 術後1ヶ月で消失を確認 |
より幅広な二重を希望して再手術希望 | 1人 | 患者の要望により再手術対応 | 審美的要望による修正 |
地方在住患者の一部は通院困難で、電話対応や地元医師による対応が必要でした。
二重整形の研究が示す意義と今後の展望
本研究で、ミャンマーにおける二重整形が、機能面・美容面で有効であることが示されました。
ミャンマーでは民族ごとに好まれる二重の形が異なる点なども、気に留めておくとよいでしょう。
術後のケアや耐性剤の問題など、今後の課題についても対応が必要です。
本研究はミャンマーにおける初の大規模臨床研究として、今後、他の臨床医や研究者の研究において参考のひとつとなるでしょう。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
二重整形に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。