河野太郎 医師 東海大学医学部外科学系形成外科 教授の経歴
1993年 | 鹿児島大学医学部 | 卒業 |
1993年 | 東京女子医科大学形成外科 | 入局 |
1995年 | 東京都立府中病院(現・東京都立多摩総合医療センター)外科 | 研修医 |
1997年 | 東京女子医科大学形成外科 | 助教授 |
2007年 | 東京女子医科大学形成外科 | 準講師 |
2013年 | 東海大学医学部外科学系形成外科 | 准教授 |
2016年 | 日本大学医学部形成外科学系形成外科学分野 | 客員教授 |
2021年 | 東海大学医学部外科学系形成外科 | 教授 |

ここからはまぶたのクリニックのコラム編集部であり当記事の筆者である私が、他のクリニック・医師をWEBサイトで紹介している背景について説明します。
医療脱毛の歴史とレーザーの進化を論文から解説

結論、医療脱毛は科学的根拠に基づき進化してきた施術であり、その原理とリスクを正しく理解することが重要です。
医療脱毛の歴史は1996年に報告されたルビーレーザーに遡りますが、合併症が多くパルス幅の延長も困難だったため、次第に研究開発の現場から姿を消しました。
その後、メラニンへの吸収が良く、より長いパルス幅を実現できるアレキサンドライトレーザーが開発され、現在の主流となっています。
この技術は選択的光熱分解という科学原理に基づいています。
レーザー光が毛のメラニン色素に吸収されて熱に変わり、その熱が発毛に関わる毛乳頭やバルジ領域を破壊することで、持続的な減毛効果がもたらされるのです。
永久脱毛の実現には、毛の再生組織を破壊するのに十分な熱を伝えるため、ミリ秒単位の長い照射時間が必要とされます。
医療脱毛では主に3種類のレーザーが肌質や毛質に合わせて使い分けられます。
レーザーの種類 | 波長 | 主な特徴 |
---|---|---|
アレキサンドライト | 755nm | メラニンへの吸収率が高く、特に色白の肌で濃く太い毛に効果的です。 |
ダイオード | 800-940nm | バランスが良く、幅広い肌質や毛質に対応可能です。産毛の脱毛も期待できます。 |
YAG(ヤグ) | 1064nm | 波長が最も長く皮膚の深部まで届きます。色の濃い肌や日焼けした肌にも比較的安全に使用できます。 |
安全な治療を行う上で、特にアジア人の肌は熱傷リスクがあるため、レーザー照射と同時に肌を冷却する処置が不可欠です。
また、医療脱毛の目標は完全な無毛状態ではなく75~90%程度の減毛が一般的であり、一度で完了しないため複数回の通院が必要となります。
医療行為である以上、熱傷や色素沈着などのリスクも伴うため、信頼できる医療機関で医師の診察のもと治療を受けることが極めて重要です。
医療脱毛の注意点と適応外のケース
医療脱毛は広く行われている施術ですが、誰でも安全に受けられるわけではありません。
光線過敏症を持つ方や妊娠中の方、また治療部位に悪性を疑う病変や炎症、外傷がある場合は、安全上の理由から治療の適応外となります。
治療を受ける上で患者自身の理解も非常に重要です。

医療脱毛は75~90%の減毛を目標としており、完全な無毛状態を保証するものではないため、その点を理解しておく必要があります。
また、刺青や母斑、濃いシミやホクロがある部位は、レーザーが強く反応し熱傷などを引き起こす危険があるため照射を避けなければなりません。
乳輪や会陰部といった元々色素が濃い部位は、熱傷や色素異常のリスクが高まるため特に注意が求められます。
また、日焼けが強い肌は合併症の危険性を高めるため、施術は推奨されません。
脱毛ワックスなどで毛根から毛を抜いてしまうと、レーザーが反応する対象がなくなるため、十分な効果は期待できません。
安全で効果的な治療のためには、事前のカウンセリングで医師が肌の状態を正しく診断することが不可欠です。
医療脱毛の準備からアフターケアまでの流れ
医療脱毛を受ける前には、安全で効果的な施術のために丁寧な準備と説明が行われます。
合併症のリスクを避けるため日焼けはせず、効果判定の写真撮影に備えて数日間は剃毛を控えるよう指導されます。
医師は照射部位に問題がないか診察し、希望者には麻酔クリームを塗布した後、レーザー照射が始まります。

実際のレーザー照射では、肌質や毛質に合わせた適切な設定が重要となります。
特にアジア人の肌は熱傷のリスクがあるため、レーザー照射と同時に肌を冷却する装置の使用が不可欠です。
施術の際は、レーザーの熱が皮膚の奥深くまで届くよう、照射の広さや出力を細かく調整します。
また、皮膚に垂直にレーザーを当てることで照射ムラを防ぎ、施術全体の安全性を高めます。
毛の密度が高い部位では、重ねて照射せず、間隔を空けて照射する場合もあります。
施術後のアフターケアも、合併症を防ぐために非常に重要です。
照射後の過ごし方や注意点は以下の通りです。
状況 | 対処法 |
---|---|
施術直後 | 冷タオルで十分に冷却し、処方された軟膏を塗布する。 |
当日の生活 | シャワーは可能だが、熱いお湯や強くこすることは避ける。 |
異常発生時 | 赤みや水疱が続く場合は、速やかに医療機関を受診する。 |
医療脱毛の部位別レーザー出力設定の目安
医療脱毛におけるレーザーの出力は、施術する部位の毛質や肌の状態に応じて細かく調整されます。
ここでは、医療脱毛で広く使われるロングパルスアレキサンドライトレーザーを例に、部位ごとの標準的な照射エネルギーの目安を紹介します。
施術部位 | スポットサイズ | 標準的なエネルギー密度 |
---|---|---|
腋(わき) | 18mm | 10~14 J/cm² |
腕 | 18mm | 14~18 J/cm² |
下肢 | 18mm | 16~20 J/cm² |
背中 | 18mm | 8~12 J/cm² |
ビキニライン | 18mm | 8~12 J/cm² |
ヒゲ | 15mm | 10~14 J/cm² |
これらの数値はあくまで標準的な目安です。
毛の密度が高い男性のヒゲや、色素が濃い乳輪や会陰部などは、熱傷のリスクを避けるため、より低い出力から慎重に照射を開始します。

初回は低い出力から始め、肌の反応を見ながら問題がなければ、回数を重ねるごとに徐々に出力を上げていくのが一般的な方法です。
医療脱毛の合併症とリスクについて
医療脱毛は医師の管理下で行われる安全性の高い施術ですが、リスクが全くないわけではありません。
施術後には赤みや毛穴の腫れといった症状が一時的に見られることがありますが、これらは適切な冷却処置により数日で改善するのが一般的です。
しかし、稀に毛嚢炎や水ぶくれ、色素沈着といった合併症が起こる可能性もあります。
特に注意が必要なのが熱傷のリスクです。
肌の色が濃い方や毛が密集している部位、日焼けした肌は熱傷を起こしやすいため、出力を慎重に調整する必要があります。
また、頬や背中などでは、かえって毛が硬く太くなる「硬毛化」という現象が起こることも報告されており、治療前にリスクを理解しておくことが重要です。

万が一、水疱や強い赤みが続くなどの症状が現れた場合は、自己判断で対処せず、速やかに施術を受けた医療機関で診察を受ける必要があります。
医療脱毛とエステ脱毛の明確な違い
医療脱毛とエステ脱毛は、しばしば混同されがちですが、その法的根拠から施術の目的、安全性に至るまで、全く異なるサービスです。
両者の主な違いを以下にまとめます。
項目 | 医療脱毛 | エステ脱毛 |
---|---|---|
法的根拠 | 医業(医師法) | 医療行為ではない |
施術者 | 医師・医師の監督下の看護師 | 資格は問われない |
目的 | 永久的な減毛 | 一時的な除毛・減毛 |
作用機序 | 毛母細胞・毛乳頭の破壊 | 毛の組織を破壊しない |
安全性 | 医師の管理下で実施 | 皮膚トラブルの報告多数 |
医療脱毛は、医師法で定められた「医業」にあたるため、施術は医師またはその監督下にある看護師にしか許可されていません。
実際に、資格のない従業員に脱毛を行わせたエステサロンの経営者が逮捕された事例もあり、その専門性は法律で厳しく管理されています。
一方で、エステ脱毛は医療行為ではないため、施術者に法的な資格は求められません。
施術の目的にも大きな差があります。

医療脱毛はレーザーを用いて毛の再生組織を根本から破壊し、永久的な減毛効果を目指す施術です。
対してエステ脱毛は、あくまで毛の組織を破壊しない範囲での一時的な除毛・減毛を目的としており、永続的な効果は期待できません。
安全性に関しても、医療脱毛は医師の管理下で皮膚冷却装置を用いるなど、リスクを管理しながら行われます。
しかしエステ脱毛では、全国の消費生活情報ネットワークに皮膚障害や熱傷といった相談が医療脱毛よりも多く寄せられているのが現状です。
これらの点から、両者は全く異なるサービスであり、その違いを正しく理解した上で選択することが重要です。
医療脱毛における安全な施設の要件
安全な医療脱毛の施術を提供するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。
まず、医療脱毛は医師法で定められた「医業」に該当するため、医師が在籍し、その管理下で施術が行われる体制が不可欠です。
看護師が照射を行う場合でも、医師による明確な指示と監督が法律で義務付けられています。
使用される機器の安全性も極めて重要です。
施術所には、厚生労働省に承認された医療用レーザー機器であり、熱傷リスクを低減する皮膚冷却装置が標準装備されていることが求められます。
また、安全性を重視する施設では、部位や肌質に応じて出力を慎重に調整し、初回照射は必ず低い出力から開始するなど、リスク管理を徹底しています。

施術前のインフォームドコンセントも重要なプロセスです。
治療目標が完全な脱毛ではなく「減毛」であることや、熱傷や硬毛化といった合併症のリスクについて、事前に十分な説明が行われなければなりません。
施術後の冷却や軟膏塗布といったアフターケア、そして万が一のトラブル発生時における対応体制が明確に整備されていることも、安全な医療脱毛施設に不可欠な要素です。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
医療脱毛に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。