葛西 健一郎 医師の経歴
1986年 | 京都大学医学部 | 卒 業 |
1986年 | 京都大学形成外科 | 入 局 |
1987年 | 関西医科大学形成外科 | 入 局 |
1992年 | 葛西形成外科 | 開 業 |

ここからはまぶたのクリニックの編集部である私が、実際に医療脱毛の論文について解説していきます。
【医療脱毛】レーザー脱毛の基本原理と進化
1980年代に開発されたレーザー脱毛は、美容皮膚治療の中心的施術として確立されています。
結論、レーザー脱毛は、適切に施術が行われれば、ほとんどの症例で永久減毛が可能です。
レーザー脱毛の基本原理は選択的光熱分解で、ターゲットである体毛のメラニン色素にレーザーを照射することで発生する熱により毛包幹細胞を破壊し、脱毛する仕組みです。
この原理を利用し、真皮の毛細血管を破壊するパルス色素レーザーや、真皮内のメラノサイトなどを破壊するQスイッチレーザーが開発されました。
その後、脱毛レーザーが開発され、比較的簡単に永久減毛の効果が得られたため、一般的な美容皮膚治療として普及しました。
【医療脱毛】脱毛レーザーの種類と適切な選択方法
脱毛レーザーには主に3つの種類があり、それぞれに特徴が異なります。
レーザーの種類 | 波長 | 特徴 |
---|---|---|
アレキサンドライトレーザー | 755 nm | ■メラニンの吸収率が最も高い ■色黒の肌では表皮熱傷が起こりやすい |
ダイオードレーザー | 810 nm | ■アレキサンドライトレーザーとYAGのレーザーの中間の特性を持つ |
YAGレーザー | 1064 nm | ■深達性が最も高い |
脱毛効果を最大化し、かつ副作用のリスクを軽減するために、レーザーの選択は非常に重要です。
- 皮膚の色(肌の黒さ):レーザー光は毛幹のメラニンだけでなく、表皮のメラニンにも吸収されるため
- 毛の太さ:レーザー光は毛幹のメラニンに吸収されて熱を発生し作用するため
- 毛根の深さ:レーザーの深達性に関係するため
- 皮膚表面冷却装置の併用:痛み軽減と表皮熱傷防止のため
- その他:毛のメラニン量、毛の密度、硬毛化への対応などへの配慮が必要
脱毛レーザーは、患者一人ひとりの毛質・肌質などに合わせて総合的に判断・選択しなくてはなりません。
【医療脱毛】脱毛レーザーの適用部位と治療法
安全かつ効果的なレーザー脱毛を行うためには、レーザーの選択やパルス幅など、パラメーターを適切に調整することが大切です。
以下は、レーザー選択の基本原則で、レーザーの特徴を比較しています。
項目 | 詳細 |
---|---|
深達性 (波長が長いほど良い) | YAGレーザー>ダイオードレーザー>アレキサンドライトレーザーの順に深達性が高い |
メラニン吸収率 (小さいエネルギー量ほど脱毛効果が高い) | アレキサンドライトレーザー>ダイオードレーザー>YAGレーザーの順にメラニン吸収率が高い |
照射時の痛み | アレキサンドライトレーザー<ダイオードレーザー<YAGレーザーの順に照射時の痛みが小さい |
レーザーの特性を十分に理解し、患者の毛質・肌質に合わせた出力・パルス幅(照射時間幅)を調整することで高い脱毛効果を得られます。
また、レーザー脱毛に適しているのは、白い肌・ある程度太い毛で・皮毛角が小さい(毛根が浅い)・密度が低い毛です。
これらの条件から外れるほど、レーザー脱毛で効果を得ることが難しくなります。
難易度 | 毛質・肌質の特徴 | 該当部位 |
---|---|---|
容易 | 【肌質】白い肌 【毛質】ある程度太さがある、皮毛角が小さい、密度が低い | 前腕(うぶ毛以外)、下腿、ワキ、Vライン |
やや難しい | 【肌質】日焼けしている、色素沈着がある 【毛質】皮毛角が大きい、太くて深い毛 | 皮毛角が大きい上腕・胸背部、男性のヒゲやうなじなど |
非常に難しい | 【肌質】母斑のように色素が濃い 【毛質】メラニン含有量が少ない、大きな皮毛角で密集している | うぶ毛や女性の顔の毛、母斑 |
一口にレーザー脱毛と言っても、肌質・毛質・施術部位などによって難易度が異なります。
難易度が「やや難しい」または「非常に難しい」に分類される施術を行う際は、パラメーターの調整など、それぞれの特性に応じた特別な配慮が必要です。
【医療脱毛】レーザー脱毛の副作用とその対策
レーザー脱毛における代表的な副作用としては、表皮熱傷・毛嚢炎・硬毛化などが挙げられます。
原因・予防策・アフターケアなどは症状によって異なりますが、表皮焼けを例に挙げ対処法などを紹介します。
対処の流れ | 詳細 |
---|---|
原因 | 皮膚に色素沈着がある場合、レーザーが表皮のメラニンに吸収されることが原因 |
ケアの考え方 | 基本的には表皮だけの損傷であるため、適切な処置を行えば後遺症なく治癒する |
治癒までの経過 | 黒い痂皮が剥がれた後に白斑、発赤、色素沈着へと変化し、数ヶ月以上かけて治癒する |
予防策 | ■表皮メラニンへの吸収を抑えるため、長い波長・長いパルス幅を使用する ■日焼け・色素沈着の場合は、脱毛を避ける方が無難 ■表皮の冷却 |
万が一副作用が生じた場合でも、適切なアフターケアを迅速に行うことで、症状の悪化を防ぎ、予後を改善することができます。
レーザー脱毛において副作用が起きた場合は、患者の気持ちに寄り添い、最後まで根気強く対応することが重要です。
【医療脱毛】レーザー脱毛の安全性と法的な問題
日本では、看護師など研修を修了した有資格者が、医師の指示・監督のもとで診療補助行為として施術することが認められています。
しかし、表皮熱傷などの副作用が発生した場合は医師による迅速な指示・処置が不可欠となるため、適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。
無資格者による施術や、医師の指示・監督がない状態での施術は医師法違反になります。
エステサロンでの脱毛施術は合法ではないものの、健康被害を受けた患者からの被害届がないと捜査が開始されないといった問題も起きています。
医師・看護師は、レーザー脱毛が医療行為であることを再認識し、責任を持って患者と向き合うことが大切です。
【医療脱毛】レーザー脱毛におけるトラブルシューティング
レーザー脱毛におけるトラブルの大半は、初回照射時、もしくはパラメーターを大きく動かしたときに起こることが分かっています。
パラメーターの設定に迷った場合は、弱めから照射し、次回から出力を少し上げるというという流れが最も安全で、トラブル回避につながります。
パラメーターは、皮膚表面冷却装置を併用したり、施術中に患者とコミュニケーションを取ったりしながら慎重に調整しなくてはなりません。
再施術となった場合には、前回の施術で問題がなければ、同条件で照射する、あるいはパラメーターをわずかに上げることでトラブルが起こりにくくなります。
脱毛効果が得られないことによる再施術の場合は、無理をしないという姿勢が大切です。
トラブル防止のため、施術を見送るという選択肢があることを覚えておきましょう。
【医療脱毛】脱毛レーザーの治療効果と患者満足度の関係性
脱毛レーザーは、毛周期などを理由に、複数の照射によって永久減毛効果を得られる仕組みになっています。
つまり、複数回の施術が安全かつ効果的に行われれば、患者満足度が上がるということです。
レーザー脱毛の施術を受けた患者にとって、最も喜ばしい結果は、不要な毛が生えなくなることです。
しかし、結果が出るまでのプロセス・安全性・トラブル発生時の適切な対応なども患者の満足度に大きく寄与します。
施術者は、安全性を担保した施術が患者の満足度を高めるということを十分に理解した上で施術を行うことが大切です。
【医療脱毛】レーザー脱毛の成果は理論と手技により実現される
レーザー脱毛の最大の成果は、患者の理想とする脱毛が実現されることです。
医療従事者は、安全かつ高い効果のレーザー脱毛を行うためには、レーザーの特性を知り、最適な機器で施術することが大切です。
また、患者の毛質・肌質に応じて出力・パルス幅などのパラメータを調整し、患者とコミュニケーションを取りながら無理のない施術を心がけましょう。
事前に、副作用が出る可能性や施術が難しい部位があることを説明し、万が一トラブルが起きた場合は迅速・誠実に対応することも徹底してください。
レーザー脱毛の十分なノウハウと高度な技術を持って誠実な施術を行うことで、患者・施術者双方にとって高い成果を得られると考えます。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
医療脱毛に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。