鈴木晴恵 医師の経歴
1984年 | 国立高知大学医学部 (旧:高知医科大学医学部) | 卒 業 |
1984年 | 京都大学医学部附属病院形成外科 | 研修医 |
1986年 | 京都大学医学部附属病院麻酔科 | 医 員 |
1988年 | 大阪赤十字病院形成外科 | 医 師 |
1988年 | 冨士森形成外科 | 勤務医 |
1990年 | 北山武田病院形成外科 (旧:城北病院形成外科) | 勤務医 |
2000年 | 鈴木形成外科 | 院長 |

ここからはまぶたのクリニックの編集部である私が、実際に医療脱毛の論文について解説していきます。
医療脱毛におけるレーザー治療とは?基本原理と進化の歴史
レーザー脱毛は、この30年ほどの間に、電気脱毛より優れた医療脱毛として普及しました。
日本人は無駄毛処理に対する意識が高いこと、電気脱毛と比べて広範囲を短時間で施術できること、施術者の技術習得が比較的容易であることなどが要因と考えます。

結論、レーザー脱毛は、需要の高さから、医療施設だけでなくエステ業界でも導入され、社会的に広く受け入れられています。
レーザー脱毛の基本原理は光熱破壊で、レーザーを毛のメラニン色素に反応させて発生する熱により毛包組織を破壊します。
アレキサンドライトレーザー・ダイオードレーザー・YAGレーザーが主流ですが、歴史が浅いことに起因して、効果・持続性やリスクについては更なる検証が必要です。
医療脱毛のレーザー治療において医療機関が担うべき専門性とは
レーザー脱毛は、需要の高さから、医療機関だけでは需要をまかないきれません。
エステサロンがレーザー脱毛の需要の一部を担うことは必然のことであり、両者は協力関係にあることが望ましいでしょう。
特に医療機関は、脱毛技術の模範を示す、熱傷などの合併症に適切に対応するなど、持ち得るすべてのノウハウや技術を提供する必要があります。
医療機関とエステサロンは競争・対立するのではなく、双方の強みを活かし、安全かつ適切なレーザー脱毛を提供するという専門的な役割を果たすべきでしょう。
医療脱毛のレーザー治療における脱毛の禁忌部位・患者
レーザー脱毛には禁忌部位が存在します。
禁忌箇所 | 理由と対応策 |
---|---|
眼窩縁より内側(眼球および眼の近く) | ■網膜の傷害を引き起こす心配があるため ■眼球および眼の近くへの照射は避け、施術では目を保護する |
肛門・膣周囲 | ■禁忌部位ではないが、注意が必要な部位 ■感染の危険性があるため |
日焼け・色素沈着のある部位 | ■レーザー光は表皮のメラニンにも吸収されるため、有色人種は熱損傷が起こりやすい ■有色人種に対しては冷却が必須 ■日焼けした患者の場合は、日焼けがとれるのを待つのが最善策である |
禁忌部位に伴い、以下は禁忌患者となります。
- 眼窩縁より内側(眼球および眼の近く)の脱毛を希望する人
- 日焼けのある部位・色素沈着のある部位を持つ人
また、以下は禁忌患者となります。
禁忌患者 | 理由と対応策 |
---|---|
白髪や産毛の永久脱毛を希望している人 | ■白髪・産毛はメラニン色素が薄いため、レーザー脱毛の効果が得られにくい |
薬物投与中の人およびホルモン失調のある人 | ■薬物投与・ホルモン失調は発毛を促進するため、レーザー脱毛の効果が得られにくい |
痛みや不快感に耐えられない人 | ■個人差はあるが、レーザー脱毛は痛みを伴う |
完全永久脱毛など、効果を期待しすぎる人 | ■1回の施術で完全永久脱毛が得られる例は稀 ■十分な減毛効果を得るには、一般的に1~3ヶ月おきに5~7回の施術が必要とされる ■十分な長期減毛効果が得られない人も10~20%の割合で存在する |
レーザー脱毛を行う施設では、禁忌部位・患者について熟知しておく必要があります。
施術者は、被施術者の期待と術後の結果に乖離がないように、事前に十分な相談・説明をしておくことが求められます。
医療脱毛のレーザー治療における3つの効果分類と施術回数の目安
レーザー脱毛の効果を「永久脱毛」と表現することがありますが、歴史が浅いことに起因して、持続性については「長期減毛」が相当であるというのが専門家の見解です。
以下は、レーザー脱毛の3つの効果と施術回数の目安です。
種類 | 脱毛期間・施術回数の目安 | 定義 |
---|---|---|
一時脱毛 | ■脱毛期間:短期間 ■施術目安:通常1~3ヶ月 | ■体毛の再生が遅延すること ■毛が生えない期間は限定的である |
永久減毛 | ■脱毛期間:毛周期に6ヶ月を加える ■施術目安:脱毛期間を超えてから | ■一定回数の施術後、成長期毛の数が減少する ■この状態がその部位の毛周期よりも長く持続すること |
完全脱毛 | ■脱毛期間:不特定 ■施術目安:一時・永久のどちらでも起こり得るため、不特定 | ■毛がほとんど生えてこない状態のこと ■この状態は、一時的なもの・永久的なものどちらにでも起こり得る |
現状では、レーザー脱毛の現実的な効果は「永久減毛」と認識されています。
ただし、レーザー脱毛は、1回の施術で完全な永久減毛を期待することは難しく、歴史の短さから効果・持続性については未確認な点が多いというのが実情です。
レーザー脱毛を含む医療脱毛を導入する施設では、患者に効果・持続性について正しく説明した上で施術を行うなど慎重な姿勢を取ることが求められます。
医療脱毛におけるレーザー治療のターゲット領域
レーザー脱毛では、毛球(バルブ)と毛包幹細胞が存在するバルジ領域の両者をターゲットとすることが重要です。
バルブは光熱破壊によって、メラニン色素を持たないバルジ領域は、毛幹からの熱伝導やスーパーロングパルスによる光熱破壊によって永久的な脱毛が可能になります。
レーザー脱毛の効果を決定する主な要因は、波長・パルス幅・冷却です。
波長は、特定の波長の光を利用することで毛包内のメラニンに吸収させ、発熱させることで脱毛を促します。
パルス幅は、レーザー光が皮膚に照射される時間の長さを示しており、発毛組織にダメージを与える役割を担います。
これらの要因を適切に組み合わせ、患者の肌質・毛の色・毛の太さなどに合わせて最適な施術条件を行うことが安全で効果的なレーザー脱毛の実現につながります。
医療脱毛におけるレーザー治療の代表的な装置の特徴比較
以下は、レーザー脱毛の代表的な装置の特徴を比較した一覧表です。
レーザーの種類 | 波長 | 対象者 | 特徴 |
---|---|---|---|
ルビー | 694nm | 白肌・黒毛 | 現在は主流ではない |
アレキサンドライト | 755nm | 中間~色白肌 | 幅広く普及 |
ダイオード | 800nm | 黒毛対応可 | 高出力・安全性高い |
YAG | 1064nm | 色黒肌向け | 深部まで照射可能 |
医療脱毛におけるレーザー照射時のリスク軽減と冷却技術
メラニン含有量の多い日本人は、レーザー脱毛の仕組みにより、熱損傷を受けるリスクがあります。
これは、レーザー脱毛における最大の課題であり、そのリスク軽減には冷却技術が欠かせません。
冷却技術には、接触冷却・冷風・冷却スプレーなどがあり、最近ではPSFと呼ばれる冷却に頼らずして表皮の熱損傷を防ぐ技術も開発されています。
いずれにせよ、施術者は冷却方法や医療機器の特性を十分に理解し、患者の肌質・毛質などに応じて適切な方法を選択することが重要です。
医療脱毛におけるレーザー治療の施術前・後のケアとリスク管理
安全かつ効果的なレーザー脱毛を行うためには、施術者・被施術者の双方が、施術前・中・後のそれぞれで十分なケアとリスク管理をすることが大切です。
具体的な準備・注意点は以下のとおりです。
段階 | 準備・注意点 |
---|---|
施術前 | ■日焼けの回避 ■剃毛または除毛クリームの使用 ■抗ウイルス薬の予防投与 |
施術中 | ■術前に、術野の皮膚の状態を写真で記録 ■最適出力の調整と慎重な照射 ■トラブル防止のための局所観察 ■施術者・被施術者双方の眼の保護は必須 |
施術後 | ■冷却 ■抗炎症ケア ■外傷回避 ■化粧・日焼けの注意 |
医療脱毛におけるレーザー治療の副作用と対応策
レーザー脱毛の最大の副作用は熱損傷ですが、その他にも副作用が起きる可能性があります。
以下の表で、レーザー脱毛における代表的な副作用と対応策を示しています。
副作用の種類 | 具体的な症状・兆候・対応策 |
---|---|
表皮損傷 | ■熱傷、紅斑、水疱など ■皮膚が白くなるといった急性の表皮損傷の兆候が見られるため、直ちに出力を下げる ■十分な冷却を行うなどの対策を徹底する |
皮膚の変化 | ■毛嚢炎、色素沈着、脱色、発毛誘導など ■一次的・意図的ではない症状もあるため、事前に被施術者への説明が重要 ■各症状のメカニズムの検証が行われている段階 |
網膜障害 | ■メラニンに強く反応するため ■眼そのもの・眼の近くへの照射は避ける ■施術者と被施術者の適切な眼の保護が必須 |
医療脱毛のレーザー治療における課題と今後の展望
レーザー脱毛は優れた医療脱毛方法と広く認知されていますが、その原理から、現段階ではメラニンの少ない白髪・金髪へのアプローチは困難です。
2003年にFDAの許可を得たメラダインで一定の効果が認められましたが、近年では光線力学療法によりメラニン色素を持たない毛にも有効な脱毛方法が開発されています。
従来のレーザー脱毛の限界を超え、より多様な毛質・肌質の患者に対応できる医療脱毛の実現が期待されます。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
医療脱毛に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。