山下理絵 医師の経歴
北里大学医学部 | 卒 業 | |
北里大学病院 形成外科・美容外科 | 入 局 | |
横浜南共済病院 形成外科・美容外科 | 入 局 | |
横浜市民病院 外科・形成外科 | 入 局 | |
代官山内科外科クリニック (旧:日比谷病院)外科・形成外科 | 入 局 | |
熊倉整形外科病院 整形外科・形成外科 | 入 局 | |
北里大学救急センター 形成外科 | チーフ | |
北里大学 形成外科・美容外科 | チーフ | |
相模原協同病院 形成外科・美容外科 | 入 局 | |
1994年 | 湘南鎌倉総合病院 形成外科・美容外科 | 部 長 |
北里大学 形成外科 横浜市立大学 形成外科 | 非常勤講師 | |
2004年 | クリニーク・ラ・プラージュ葉山抗加齢美容医学(現在は閉鎖) | センター長兼務 |
2017年 | 湘南藤沢形成外科クリニックR | 総院長 |

ここからはまぶたのクリニックの編集部である私が、実際に医療脱毛の論文について解説していきます。
医療脱毛における最適なレーザー機器の選択基準とは
医療脱毛の主流であるレーザー脱毛は選択的光熱融解理論を基本原理とし、メラニン色素にレーザー光が吸収される性質を利用しています。
レーザー脱毛の標的は、立毛筋付着部の毛隆起(バルジ領域)・毛包下部の毛球部・皮脂腺開口部で、標的組織を選択的に加熱・破壊して脱毛効果を得る仕組みです。
レーザー脱毛は、照射方法の違いかから、HR(熱破壊式)とSHR(蓄熱式)の2つに分類されます。
また、波長の違いによって、主にアレキサンドライトレーザー・ダイオードレーザー・YAGレーザーの3つに分かれます。
結論、医療脱毛のレーザー治療では、SHR(蓄熱式)のように低出力照射を優位とするパラダイムにシフト変更していく必要があります。
レーザーの種類 | 特徴 | 照射方法 | 波長 |
---|---|---|---|
ルビーレーザー | 脱毛治療では普及していない | HR(熱破壊式) | 694nm |
アレキサンドライトレーザー | 日本で一般的に使用されている | HR(熱破壊式) | 755nm |
ダイオードレーザー | 痛み・副作用が少ない | HR(熱破壊式)/SHR(蓄熱式) | 800~810nm |
YAGレーザー | 肌の奥深くに届き、濃い・根深い毛にも対応 | HR(熱破壊式) | 1,064nm |
IPL | レーザーではなく、光治療 | HR(熱破壊式)/SHR(蓄熱式) | 500~ 1200nm |
医療脱毛におけるパルス幅・照射条件の最適化について
レーザー脱毛の効果・安全性において重要な役割を果たす要素の1つに、パルス幅があります。
レーザー脱毛において最適なパルス幅は20~40ms程度とされており、実際に使用される医療脱毛機器でも、推奨される範囲内のパルス幅が用いられています。
例えば、従来主流となっていたHR(熱破壊式)のダイオードレーザー(波長800nm)のパルス幅は30msで照射が行われています。
一方、SHR(蓄熱式)のダイオードレーザー(波長810nm)はパルス幅20msで照射が行われています。
比較項目 | HR(熱破壊式) | SHR(蓄熱式) |
---|---|---|
メカニズム | 高出力により一撃で毛根を破壊 | 低出力×高頻度で蓄熱し毛包を破壊 |
施術方法 | 一点集中照射(スタンプ式) | 頻回照射(スライド式) |
主なターゲット | メラニン+毛球・毛隆起 | 毛包全体+発毛因子 |
痛み | 強い | 弱い |
副作用 | 多い(ポップアップ、炎症など) | 少ない(軽度の紅斑) |
レーザー脱毛では、出力・照射回数は施術者による調整が可能です。
出力の調整は、脱毛効果の最大化と副作用の最小化を両立させるための鍵となるため、施術者の専門知識と経験に基づいて施術が行われる必要があります。
【医療脱毛の臨床試験】HR(熱破壊式)とSHR(蓄熱式)の効果の違い
HR(熱破壊式)とSHR(蓄熱式)の効果の違いを検証するため、ハーフサイドテストを用いた臨床試験を実施しました。
【被験者】30代女性の両腋窩(左右両方の脇の下)に2カ月ごと3回照射
【使用機器】
■右側:HR(熱破壊式):LightSheer XC(波長:800nm, パルス幅:30ms, 出力:23J/cm²)
■左側:SHR(蓄熱式):Soprano XL(波長:810nm, パルス幅:出力:20ms, 5→10J/cm²)
【毛根数カウント】:3cm²内の毛根を拡大鏡で同一者が確認する
回数 | HR(右)の毛根数 | SHR(左)の毛根数 |
---|---|---|
施術前 | 57 | 49 |
1回目 | 21 | 16 |
2回目 | 15 | 14 |
3回目 | 5 | 4 |
臨床試験の結果、HR(熱破壊式)とSHR(蓄熱式)に脱毛効果の差はほとんど見られませんでした。
【医療脱毛の臨床試験】HRとSHRの痛み・副作用を比較
同臨床試験では、HR(熱破壊式)において、レーザー照射直後の毛孔にポップアップ・膨隆疹・浮腫といった皮膚のダメージが確認されました。
HR(熱破壊式)は高出力のレーザーを短時間で照射し、標的器官を一発で破壊する熱エネルギーを与えることに起因する副作用と考えられます。
一方、SHR(蓄熱式)にはHR(熱破壊式)のような皮膚ダメージは確認されず、軽度の紅斑程度にとどまりました。
また、SHR(蓄熱式)は治療中の痛みが少なく、施術後の負担も少ないため、継続率が高い傾向にあります。
一方、HR(熱破壊式)は痛みを伴うため、男性のヒゲ脱毛や痛みに弱い女性には向かず、治療を断念する患者が多いという問題が生じています。
SHR(蓄熱式)とHR(熱破壊式)同等の脱毛効果を持ちながらも、治療中の痛みや皮膚ダメージが少ないという観点から、前者に利点があるという結論に至りました。
医療脱毛機器の選定時に意識すべきポイント
臨床試験の結果を踏まえ、医療脱毛機器を選ぶ際の注意点をまとめました。
- レーザーの種類は、毛のメラニンに効率的に吸収され、かつ周囲の皮膚組織へのダメージを最小限に抑えることができる波長を選択する
- パルス幅は20~40ms程度に設定する
- 施術者の知識・経験などが脱毛効果・副作用に影響することに配慮する
- 痛み・治療継続性の観点から、SHR(蓄熱式)が優位であることに配慮する
医療脱毛は1回の施術で十分な効果を得ることが難しいため、患者の痛みや治療の継続性に配慮して医療機器を選ぶことが重要です。
SHR(蓄熱式)を選ぶことで、患者の医療脱毛に関する懸念を大幅に解消できるでしょう。
低出力レーザー治療のトレンドと医療脱毛の今後の展望
レーザー脱毛を含むレーザー治療における現在のトレンドは、低出力照射です。
医療脱毛も例外ではなく、従来主流であったHR(熱破壊式)からSHR(蓄熱式)へのパラダイムシフトが起きています。
低出力照射は、弱いエネルギーを短時間に複数回照射することで、標的器官をじわじわと温めて破壊して効果を得ます。
より低侵襲で副作用が少なく、患者の負担を軽減できる照射方法であることから高い注目を集めています。
SHR(蓄熱式)により痛みによる治療離脱の問題が解消され、患者に寄り添った医療脱毛が実現されていくでしょう。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
医療脱毛に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。