
ここからはまぶたのクリニックのコラム編集部であり当記事の筆者である私が、他のクリニック・医師をWEBサイトで紹介している背景について説明します。
二重整形における埋没式重瞼術の基本と特徴
皮膚側と結膜側を糸で結紮(けっさつ:縛って止める)することにより、皮膚を後方の瞼板(けんばん)や挙筋腱膜(きょきんけんまく)方向に引き込み、重瞼線を作り出す仮縫い手術です。
結論、埋没法を選択する場合は、術後の糸の移動や、将来切開法に切り替えたときの抜糸のしやすさなども考慮して、患者に合わせた最適な術式を選ぶことが重要です
二重整形の埋没法の種類と分類
埋没法は多様化していますが、主に以下の4つの軸で分類できます。
分類軸 | 内容説明 |
---|---|
1. 瞼板法 vs 挙筋法 | 糸の結紮部位が「瞼板」側か「眼瞼挙筋」側の結膜か |
2. 線留め vs 点留め | 糸が皮膚を「線状」に引き込むか、「点状」に引き込むか |
3. 皮膚側結紮 vs 結膜側結紮 | 糸の結紮(けっさつ:糸結び)が皮膚側(まぶたの外側)か結膜側(まぶたの内側)か |
4. 同一糸内単結紮 vs 複数結紮 | 同じ糸で結紮部位が1つか複数か |
これらの組み合わせでほぼ全ての埋没法が説明できます。
埋没法はいずれ緩む可能性は高いですが、裏を返せば修正が容易なことや、抜糸すればある程度元のまぶたに戻せる可能性が高いことがメリットであると言えます。
しかしながら、近年では抜糸が困難な埋没法も増えてきており、埋没法のメリットを打ち消してしまっている場合があります。
臨床で多い埋没法は以下の4つです。
埋没法の種類 | 結紮位置(結び玉の位置) | 部位(針を通す場所) | 留め方 |
---|---|---|---|
1.皮膚側結紮瞼板法線留め | 皮膚 | 瞼板法 | 線 |
2.皮膚側結紮挙筋法線留め | 皮膚 | 挙筋法 | 線 |
3.結膜側結紮挙筋法線留め | 結膜 | 挙筋法 | 線 |
4.皮膚側結紮瞼板法点留め | 皮膚 | 瞼板法 | 点 |
二重整形でよく用いられる埋没法の種類と特徴
実際の臨床現場で多いと体感している埋没法について特徴を整理します。
1.皮膚側結紮瞼板法線留め
- 特徴:最も基本的な方法
- メリット:手技が簡単、抜糸が容易
- デメリット:瞼板変形、糸露出のリスク
2.皮膚側結紮挙筋法線留め
- 特徴:瘢痕形成が最も少ない
- メリット:抜糸が最も容易、切開法への移行がスムーズ
- デメリット:手技の習得にコツが必要
3.結膜側結紮挙筋法線留め
- 特徴:近年増加傾向
- メリット:皮膚表面に傷が残らない、腫れが少ない
- デメリット:手技が困難、抜糸に専門性が必要
4.皮膚側結紮瞼板法点留め
- 特徴:最も簡便な方法
- メリット:手技が簡単
- デメリット:瞼板変形が強い、持続性が劣る
二重整形術後の眼瞼内部の瘢痕形成
埋没法の手術のあと、まぶたの中ではどのようなことが起こっているのか解説します。
ひとつは結紮部位の移動です。

埋没法は糸で引っ張って二重を形成する方法であるため、結び目である結紮部位にも常に引っ張る力が加わり、手術当初とは違う位置に移動していくことがあります。
- 瞼板法:結紮部位が深部に移動しやすい
- 挙筋法:結紮部位の移動が少ない
- 点留め:最も深部まで移動する傾向
もうひとつは瘢痕(はんこん)つまり傷あとの形成です。
常に引っ張る力が加わることで、糸や結紮部位が移動していくと、周囲の組織に瘢痕を形成していきます。

特に垂直方向、つまりまぶたの外側である皮膚側からまぶたの内側である結膜方向へ瘢痕が形成されます。
術式による瘢痕形成の違いは以下のとおりで、2.皮膚側結紮挙筋法線留めが最小です。
術式名 | 瘢痕形成の程度(多→少) |
---|---|
4. 皮膚側結紮瞼板法点留め | ★★★★★ |
1. 皮膚側結紮瞼板法線留め | ★★★★☆ |
3. 結膜側結紮挙筋法線留め | ★★★☆☆ |
2. 皮膚側結紮挙筋法線留め | ★★☆☆☆ |
二重整形における埋没法のリスクと対策
埋没糸の固定位置は術者ごとに異なり、これにより以下のようなリスクが生じやすくなります。
- 浅い位置(皮下脂肪など)にあると糸が皮膚側に近く、露出や感染リスクが高い
- 深層(ミューラー筋・挙筋腱膜)にあると違和感や腫れの原因になることがある
- 複数回の埋没歴があると、糸が複雑に残存しており、修正時の障害になる
切開法手術中に観察された過去の埋没糸の中には、組織に癒着していたり、位置が深く視認困難であったりするものも多くありました。
特に何度も埋没法を受けている場合、糸の数が多く、除去が困難になることもあります。

埋没法のリスクを最小限に抑えるには、術式の選択と術者の技術に加えて、以下のような事前確認が重要です。
- 過去の埋没歴や使用された糸の情報を記録しておく
- 糸の材質や通し方、固定方法について説明を受ける
- 異常があれば早めに医師に相談する
- 安易な再手術を繰り返さない(癒着・線維化リスク)
埋没法は気軽に受けられる反面、糸の固定位置や構造によって炎症・しこり・再手術の困難さといったリスクが生じやすく、術後トラブルの可能性を十分に理解しておく必要があります。
二重整形の埋没法と切開法の比較
切開法では皮膚を開いて、まぶたの内部構造(皮膚・皮下組織・眼輪筋・瞼板・挙筋腱膜・ミューラー筋など)を確認しながら手術を行います。
切開法では以下の点が確実な二重形成の鍵になります。
- 解剖学構造を視認しながら調整可能
- 不要な脂肪や皮膚の切除も同時に行える
- 瞼板と皮膚を確実に固定できる
- 癒着が強固で戻るリスクが低い
埋没法と切開法の特徴を以下にまとめます。
比較項目 | 埋没法 | 切開法 |
---|---|---|
組織の連結 | 糸で一時的に固定 | 組織同士を縫合して固定 |
ラインの安定性 | 個体差あり/戻ることがある | 戻りにくく半永久的 |
内部構造の視認 | 不可(手探り) | 可(直視下で操作可能) |
再現性 | 術者の技術による | 構造を見て再現性高く操作可能 |
二重整形における埋没法の選択基準
埋没法の適応と禁忌についてまとめます。
適応(施術が向いている人)
- 一重まぶたで、自然な二重まぶたを希望する人
- まぶたの皮膚のたるみが少なく、比較的若い人
- 初めて二重施術を受ける人で、切開法に抵抗がある人
- 将来的に元に戻す可能性も考慮し、可逆性を重視する人
禁忌(施術を避けた方がよい人)
- まぶたの皮膚が大きくたるんでいる場合(皮膚の余剰が多い)
- 明らかな眼瞼下垂(まぶたを開ける筋肉の機能が低下している状態)がある場合
- 過去の手術でまぶたに強い瘢痕(傷あと)ができている場合
- まぶたに感染症を起こした既往がある場合
埋没が取れやすく、将来切開法を行なう可能性も高い日本人のまぶたには、余計な瘢痕形成が少なく、抜糸も容易な「皮膚側結紮挙筋法線留め」の埋没法が、適切であるといえます。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
森上 和樹 医師の経歴
1984年 | 富山医科薬科大学医学部医学科 | 卒 業 |
1984年 | 大阪市立大学医学部附属病院 | 研修医 |
1986年 | 大阪市立大学大学院医学研究科 外科系外科学 | 入学 |
1990年 | 大阪市立大学大学院医学研究科 外科系外科学 | 博士課程修了 |
1990年 | 田辺中央病院 | 医長 |
1991年 | 城本クリニック | 開業 |
現在 | 城本クリニック | グループ総院長 |
二重整形に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。