田中 喜代次 医師の経歴
1983年3月 | 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科 | 修了 |
1983年4月 | 大阪市立大学教養部(現:大阪公立大学) | 講師 |
1989年4月 | 筑波大学体育科学系 | 講師 |
1993年4月 | 筑波大学体育科学系 | 助教授 |
2004年4月 | 筑波大学大学院人間総合科学研究科 | 教授 |
2005年5月 | 筑波大学発研究成果活用ベンチャー企業 | 設立 |
2018年4月 | 筑波大学 | 名誉教授 |
2018年4月~ | 筑波大学・東京薬科大学・東都大学 | 非常勤講師 |

ここからはまぶたのクリニックのコラム編集部であり当記事の筆者である私が、他のクリニック・医師をWEBサイトで紹介している背景について説明します。
医療ダイエット:肥満対策に運動と食事が重要な理由
肥満は、エネルギー摂取と消費の不均衡によって引き起こされる状態として広く認識されています。

結論として、肥満を効果的に治療するためには、食生活の見直しによるエネルギー摂取の減少と、運動で消費エネルギーを増やすことを通じて、ライフスタイルそのものを変更することが不可欠です。
食事制限のみの減量では、体重は減少するものの、同時に除脂肪体重も失われるという課題があります。
しかし、運動とエネルギー制限を組み合わせることで、除脂肪体重を維持しながら、より健康的かつ持続可能な減量が可能になると考えられています。
近年、肥満治療において運動プログラムの重要性が高まっています。
有酸素運動を乳酸閾値強度で行い、さらにエネルギー制限を伴うプログラムが、肥満女性の生理学的状態に1年間でどのような長期効果をもたらすかを評価することが、この論文で紹介されています。
医療ダイエットの研究プログラム|対象者と具体的な実施内容
この研究では、30~50代の軽度肥満傾向の女性合計13名が、運動と食事を組み合わせた複合的なプログラムに参加しました。
参加者は運動と食事療法グループ(8名)と対照グループ(5名)に分かれました。
プログラムは18週間の監督下でのコンディショニングから始まり、運動と食事療法グループは週3回、1回最低90分の有酸素運動セッションを行いました。
これに週平均2日の自己管理運動も加え、総トレーニング頻度は平均して週5日程度に達しました。
食事面では、1日あたり約1,500~1,600 kcalのエネルギー制限を目指し、週1回の食事ミーティングで指導を受けました。
監督下プログラム終了後、参加者は1年間の自己管理フェーズへ移行し、この期間中も週平均2日の頻度で有酸素運動を継続しました。
運動心拍数は平均約140拍/分と指導付きプログラムと同等の強度が維持され、食事摂取量も平均約1645 kcal/日となりました。
医療ダイエットの研究プログラム|測定項目と評価方法
本研究では、参加者の生理学的状態を詳細に評価するため、多岐にわたる項目が測定されました。
身体組成から有酸素能力、血液データ、運動パフォーマンス、食事摂取量、そして運動実施状況まで、あらゆる側面から評価が行われています。
身体測定と体組成の評価
身長、体重、BMI、体脂肪率、脂肪量、除脂肪量、脚の容積、周径、そして皮下脂肪厚が測定されました。
体脂肪率は水中体重測定法で体密度を測定し算出されています。
生理学的変数と血液検査
最高酸素摂取量(VO2max)や乳酸閾値(LT)での酸素摂取量を呼気ガス分析器で測定し、LTは血液乳酸値から決定されました。
心拍数や血圧(収縮期・拡張期・平均)も遠隔測定されました。
血中脂質(総コレステロール、HDLC、TG、LDLC、AI)や血液学的変数(血清鉄、血球数など)は絶食後の血液サンプルで分析され、肺機能も評価項目に含まれました。
運動パフォーマンスの測定項目
最大速度、乳酸閾値における速度、筋力(握力、背筋力、膝伸展力)、柔軟性(体幹屈曲、体幹伸展)、そして瞬発力(サイドステップ)が含まれました。
食事摂取量の評価
参加者が3日間の食事記録をつけることで行われ、これは通常の平均的な食事摂取量を代表するものとされました。
エネルギー摂取量は標準的な食品成分表に基づいて計算され、目標は1日あたり1,500~1,600kcalでした。
プログラム終了時の平均摂取量は1,736±152 kcal/日でした。
また、三大栄養素の構成(タンパク質、脂質、炭水化物)も評価されています。
運動実施状況の評価
監督下でのプログラム期間中(18週間)の運動頻度と時間(週3回、最低90分、連続ジョギング25~45分)がモニターされ、自己管理フェーズ中の運動頻度(週2.6±1.1日)や種類(ジョギング、ウォーキング、エアロビクスダンス、ジャズダンス)も記録されました。
運動強度も乳酸閾値(LT)と知覚された運動強度(RPE)によってモニターされました。
これらの測定項目と評価方法は、肥満傾向の女性の身体組成、生理学的状態、運動能力、および生活習慣(食事と運動)の変化をあらゆる側面から捉えるために用いられました。
医療ダイエットの研究プログラム|18週間の運動と食事で得られた成果
18週間の運動と食事制限プログラムにより、運動と食事療法グループの参加者には顕著な生理学的改善が見られました。
体重や体脂肪率の減少に加え、心肺機能や脂質プロファイルも大きく改善しています。
運動と食事療法グループの改善点は多岐にわたりました。
体重は平均8.2kg、体脂肪率は5.6%減少し、腹囲や脚の容積も改善が見られました。
心肺機能を示す最高酸素摂取量(VO2max)と乳酸閾値での酸素摂取量(VO2@LT)は共に45%増加しています。
血圧や安静時心拍数も低下し、脂質プロファイル(HDLC/TC比増加、AI減少)、血液指標、筋力、柔軟性も向上しました。
事摂取量はプログラム前より約300kcal減少しています。
一方、対照グループでは、これらの変数に有意な変化は認められませんでした。
表1:18週間プログラム前後および1年後の主要変数(運動と食事療法グループ vs. 対照グループ)
変数 | 運動と食事療法グループ(前処理期) | 運動と食事療法グループ(後処理期) | 運動と食事療法グループ(1年後) | 対照グループ(前処理期) | 対照グループ(後処理期) | 対照グループ(1年後) |
---|---|---|---|---|---|---|
体重 (kg) | 64.9±4.8 | 58.1±5.5∗ | 56.7±5.4∗ | 60.3±8.8 | 58.7±8.9 | 60.5±7.8 |
体脂肪率 (%) | 36.1±3.4 | 30.5±2.3∗ | 31.3±3.1∗ | 34.0±2.3 | 34.1±2.7 | 33.4±2.5 |
VO˙2⊕LTt (ml/kg/min) | 14.6±2.4 | 21.2±4.2∗ | 21.5±4.1 | 13.7±3.2 | 13.9±2.9 | 12.9±2.3 |
VO˙2max (ml/kg/min) | 27.3±3.4 | 34.7±3.3∗ | 35.3±3.7 | 24.3±4.1 | 26.4±4.6 | 26.5±5.1 |
HDLC/TC | 0.29±0.1 | 0.33±0.09∗ | 0.33±0.09∗ | 0.23±0.04 | 0.21±0.04 | 0.24±0.04 |
収縮期血圧 (SBP, mmHg) | 129.5±14.5 | 116.0±9.1∗ | 117.3±8.8∗ | 127.8±15.5 | 124.8±16.2 | 125.8±12.6 |
拡張期血圧 (DBP, mmHg) | 81.6±13.9 | 68.8±7.9∗ | 71.6±8.2 | 74.9±16.4 | 75.3±9.2 | 83.5±12.6 |
安静時心拍数 (HR, b/min) | 73.1±9.9 | 62.8±4.2∗ | 66.0±5.2 | 64.5±10.1 | 70.8±10.7 | 67.7±8.2 |
食事摂取量 (kcal/d) | 1736±152 | 1404±124∗ | 1645±147 | – | – | – |
- ∗:前処理値と有意差あり (p<0.05)
表1の解説:プログラムによる身体の変化を読み解く
上記の「表1」は、18週間のプログラム前後と、その1年後の参加者の身体状態がどう変化したかを示しています。
特に、「運動と食事療法グループ」と対照グループを比較することで、プログラムの効果が明らかになります。
表の項目には専門的な略語が含まれていますが、簡単に説明すると以下のようになります。
- 体重 (kg):文字通り体重です。
- 体脂肪率 (%):体全体に占める脂肪の割合です。
- VO˙2⊕LTt (ml/kg/min):運動中に乳酸が急激に増え始める時点(乳酸閾値)での酸素の摂取量です。有酸素運動能力の指標となります。
- VO˙2max (ml/kg/min):体が1分間に取り込める最大の酸素量です。全身持久力の高さを表します。
- HDLC/TC:善玉コレステロール(HDLC)と総コレステロール(TC)の比率です。この値が高いほど、動脈硬化のリスクが低いとされます。
- 収縮期血圧 (SBP, mmHg):心臓が収縮したときの最も高い血圧です。
- 拡張期血圧 (DBP, mmHg):心臓が拡張したときの最も低い血圧です。
- 安静時心拍数 (HR, b/min):安静時の1分間あたりの心臓の拍動回数です。低いほど心肺機能が優れている傾向があります。
- 食事摂取量 (kcal/d):1日あたりの摂取カロリーです。
また、表中の「±」は平均値のばらつき(標準偏差)を示し、「∗」はプログラム開始前と比べて統計的に意味のある変化があったことを意味します。
この表から、運動と食事療法グループでは、体重や体脂肪率が減少し、有酸素運動能力を示すVO2@LTやVO2maxが向上し、心血管系の健康指標(HDLC/TC比の改善、血圧や心拍数の低下)も改善していることが読み取れます。
これらの改善の多くは、プログラム終了後1年経っても維持されていることが分かります。
一方、対照グループでは、これらの項目に大きな変化は見られませんでした。した。
医療ダイエットと1年間の追跡調査で維持された生理学的状態
プログラム終了後1年間の追跡調査では、多くの生理学的改善が維持されていることが明らかになりました。
特に、心肺機能や脂質プロファイル、そして体重の維持が確認されています。
運動と食事療法グループでは、体重が平均8.2kg、体脂肪率が5.6%減少し、この効果は1年後も維持されました。
有酸素運動能力を示す最高酸素摂取量(VO2max)と乳酸閾値における酸素摂取量(VO2@LT)は共に45%増加した状態を保ち、HDLC/TC比も16%増加したまま推移しました。
血圧や安静時心拍数の低下、垂直跳びやサイドステップなどの身体能力の改善も継続していました。
これらの改善が維持された主な要因は、週平均2日程度の自己管理による運動と、1日あたり約1645 kcalという適度な食事摂取量でした。
特に、比較的低いエネルギー摂取量にもかかわらず、運動を継続し適切なタンパク質摂取(約1.2 g/kg/d)を維持したことで、除脂肪体重が効果的に保たれたと考えられます。
これにより、プログラムで得られた健康上の利益が長期にわたって持続することが示されました。
医療ダイエットにおける運動頻度と生理学的変数の関係から得られた重要な示唆
追跡調査の結果、運動の頻度が参加者の生理学的状態に深く関わっていることが明らかになりました。
特に、運動頻度の変化は、身体組成、心肺機能、そして脂質プロファイルといった重要な指標の改善と密接な関係性を示しています。
例えば、運動の頻度が減ると、体重や体脂肪が増加しやすい傾向が見られました。
同様に、最大酸素摂取量(VO2max)や乳酸閾値での酸素摂取量(VO2@LT)といった心肺機能も、運動頻度が低下すると共に悪化する相関関係が確認されています。
さらに、動脈硬化の抑制に関わるHDL-C/TC比も、運動頻度の減少に伴って低下しやすいことが示されました。
この研究から、改善された生理学的状態を維持するためには、自己管理下でのトレーニングを週に2.6日から3.4日、つまり週3日以上続けることが非常に重要であると示唆されています。
週3日未満の運動頻度になると、体重や体脂肪の再増加、心肺機能や脂質プロファイルの悪化といった好ましくない変化が起こりやすくなる傾向が見られました。
興味深いことに、総エネルギー摂取量や脂質摂取量の変化は、これらの生理学的変化と直接的な関連がないことも示されており、体重減少の維持においては食事量の変化よりもトレーニング量がより重要である可能性が指摘されています。

監督下のプログラムが終了した後も、一定の運動頻度を自己管理で継続できれば、医療ダイエットによる生理学的改善効果を長期的に維持できる可能性が高いことを示しています。
したがって、長期的な健康維持には、運動の継続が鍵となる重要な要素であると言えるでしょう。
表2:トレーニング頻度の変化と生理学的変数の変化の関係(回帰分析)
従属変数 | 回帰式 | 相関係数 (R) | P値 |
---|---|---|---|
Δ体重 (kg) | Y=−1.38x−2.06 | −0.791 | <0.05 |
Δ体脂肪量 (kg) | Y=−1.38x−2.52 | −0.743 | <0.05 |
ΔVO˙2max (ml/kg/min) | Y=1.65x+3.36 | 0.789 | <0.05 |
ΔVO˙2⊕LT (ml/kg/min) | Y=1.00x+2.75 | 0.632 | 有意 |
ΔHDLC/TC (%) | Y=0.194x+0.443 | 0.632 | 有意 |
- x: トレーニング頻度の変化 (Δ Training Frequency, d/wk)
- Y: 各生理学的変数の変化
医療ダイエットの長期的な健康維持のための提言
この研究の結果から、長期的に健康状態を維持するための重要な提言が得られました。
運動の継続と適切な強度、そして自己管理が、その鍵となります。
プログラム参加者の改善された生理学的状態は、プログラム終了後1年間は退行しない可能性が示されています。
この健康状態を維持するためには、週2.6日(週3日以上)の自己管理トレーニングと、1600~1700 kcal/日の食事摂取量を継続することが重要です。
特に、毎日少なくとも60分間の有酸素運動を、乳酸閾値(LT)レベル(最高心拍数HRmaxの約75%)からLT心拍数より15拍/分高い心拍数(HRmaxの約83%)の強度で行うことで、有酸素能力が向上します。
運動セッションを時々休んだり、トレーニング頻度を週3日に減らしたりしても、トレーニングの強度と持続時間が維持されていれば、改善された生理学的・身体測定学的状態に悪影響はないとされています。
健全な運動プログラムへの参加に伴う自己評価の向上と自己管理能力の増加も重要であると考えられます。
乳酸閾値(LT)を基準としたトレーニング強度が最適であると考えられています。
医療ダイエットのまとめ|継続こそが成功の鍵
この1年間の追跡調査から、健康維持における重要な知見が得られました。
有酸素運動とエネルギー制限による体重減少プログラム後も、週3日以上のトレーニングを継続している参加者では、生理学的改善が維持されることが明らかになりました。
失われた体重の維持とフィットネスの改善には、指導付きか自己管理かを問わず、有酸素運動と食事制限の継続が最も重要な要素です。
長期的な体重減少と健康上の利益を達成するためには、運動継続の動機付けと、その必要性への理解を深める方法を見つけることが不可欠であると言えるでしょう。
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