乃木田 俊辰 医師 のぎた皮ふ科クリニック院長 東京医科大学客員教授の経歴
1979年3月 | 熊本大学医学部 | 卒業 |
1979年4月 | 熊本大学病院 皮膚科 | 入職 |
1985年6月 | 東京大学医学部附属病院 皮膚科 | 入職 |
1986年 | 東京大学大学院医学系研究科・医学部 | 博士課程修了 |
1989年 | 東京大学医学部附属病院 皮膚科 | 助手 |
1990年1月 | 東京女子医科大学病院 皮膚科 | 講師 |
1993年 | 東京女子医科大学病院 皮膚科 | 助教授 |
1993年 | ハーバード大学医学部病理学教室 | 留学 |
1997年1月 | 池袋皮膚科クリニック | 入職 |
2000年1月 | 代官山スキンクリニック | 入職 |
2003年1月 | 新宿南口皮膚科 | 開業 |
2008年 | 東京医科大学 皮膚科学分野 | 兼任准教授 |
2010年 | 東京医科大学 皮膚科学分野 | 兼任教授 |
2024年4月 | 東京医科大学 皮膚科学分野 | 客員教授 |
2024年9月 | 富士見台駅前皮ふ科 | 入職(非常勤) |
2025年5月1日 | のぎた皮ふ科クリニック | 開設 |

ここからはまぶたのクリニックの編集部である私が、実際に医療脱毛の論文について解説していきます。
医療脱毛の原理:SP(選択的光加熱分解)理論とは
1983年にAnderson & Parrishが提唱した「SP理論」は、メラニンや酸化ヘモグロビンなどの吸光特性を利用して、標的となる組織に熱エネルギーを集中させる理論です。
この理論では、熱緩和時間(TRT)内にターゲット組織に熱によるダメージを与えることで、周囲の組織への影響を最小限に抑えることができます。
結論、レーザー脱毛はSP理論に基づき、ターゲットにレーザーで熱ダメージを与えることで、ターゲット以外には影響が少なく、安全に脱毛処理ができます。
医療脱毛と「毛周期」との関係
毛には「成長期」「退行期」「休止期」という3つの周期があり、レーザー脱毛の効果が得られるのは、メラニンが多く含まれる「成長期」の毛に対してのみです。
毛周期は部位によって異なるため、施術のタイミングを調整しながら複数回の照射を行う必要があります。
顔と脚などで毛の生え変わるスピードが大きく異なる点にも注意が必要です。
毛周期の分類 | 内容・特徴 |
---|---|
成長期 | メラニンを多く含む/レーザーが有効 |
退行期 | 毛と毛乳頭が離れる準備期間 |
休止期 | 自然に抜け落ち、活動停止中 |
医療脱毛のターゲットとなる「毛包」
レーザー脱毛でターゲットとなるのは、以下の3つの毛包構造です。
- 外毛根鞘バルジ領域(幹細胞が存在する部位)
- 毛球部(毛を生み出す毛母細胞が集まる部位)
- 皮脂腺開口部(毛と皮脂腺が交差する部位)
メラニンを含む毛と毛球部の熱伝導を利用して、毛包をヒーターとして熱を集中させることで、毛の再生能力を長期的に抑制することができます。
医療脱毛に使われるレーザー装置の仕組み
レーザー脱毛に使用する装置では、「波長」「パルス幅」「エネルギー密度」の3要素が重要です。
現在医療現場で使用されているレーザー発振装置は以下のとおりです。
波長(nm) | レーザー種 | 特徴 |
---|---|---|
755 | アレキサンドライト | メラニンへの吸収率が高く、色白肌に適しています |
800 | ダイオード | バランスの取れた性能で、多くの施設で使用されています |
1,064 | Nd:YAG | 深部に到達しやすく、色黒肌の方にも適しています |
これらの装置は、表皮を守るための冷却システムも備えており、肌へのダメージを抑える工夫がされています。
医療脱毛におけるパルス幅とエネルギー設定の最適化
パルス幅とは、レーザーを照射する時間を指します。
表皮には損傷を与えず、より熱に弱い毛包にのみ影響を与えるように調整する必要があります。
理想的には10〜50msecとされていますが、3msecでも効果があるという論文もあります。
また、2001年にAltshulerらが提唱した理論では、より深部の幹細胞を破壊するには30〜400msecの長パルス幅が有効であるとされています。
ただし、実際に300~400msecの脱毛装置を使用した事例では、痛みが強く、効果は既存の装置とそれほど差がなかったと報告されています。
パルス幅については数msecから100msec以上のレーザー脱毛装置があり、未だに最適な値については標準値が定められていません。
医療脱毛における永久脱毛の定義
以前は、米国電気脱毛協会により「最終脱毛から1カ月後の再生率が20%以下」であれば永久脱毛とされていました。
1998年には、Dierickxらが新たに「永久減毛(permanent hair reduction)」という概念を提唱しました。
永久減毛とは、毛周期を越える期間で、毛が明らかに減少している状態が持続していることを指します。
現在はこの「永久減毛」の概念が、医学的見地から支持されています。
医療脱毛は進化から成熟へ
レーザー脱毛の技術は、1996年から2000年代初頭にかけて急速に進化しました。
その後は、軽微な進化はありつつ、当初の理論が踏襲され実践されてきました。
レーザー脱毛は安全で効果の高い方法ですが、患者一人ひとりに対しては、様々な副作用に十分注意して施術を行うことが重要です。
また、当院では当記事で解説した論文を参考に以下の記事を公開しています。
医療脱毛に関する専門的な知識を深めるため、臨床結果・医療技術に関する具体的な事例も学び取り入れた上で、最新の研究論文・臨床試験データに基づいて信頼性の高いコンテンツの作成に努めています。
このように、当院では信頼のおける学術誌で発表された論文等を参考に、クリニック選びの実践的なアドバイス・治療内容の解説をしております。